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Valve
2017
Wooden structure, a birdcage, sandbags,
Video documentation of a performance (filming by Edward Ken Fox, Hiroki Nishitake)
Drawing on a paper, a map




ジャカルタの道路には信号機が少ない。その渋滞都市でドライバーたちの救いとなるのは、交差点でチップをもらいながら交通整理をする「Polisi Cepek(100ルピアの警察)」と呼ばれる人々の存在である。しかし巨額の資金が投入されているインフラ整備によってやがて信号機が増えれば、Polisi Cepekも街からいなくなってしまうだろう。

インドネシアは日本政府や日本企業の巨大な投資先である。つまり私はジャカルタでPolisi Cepekの存在を知る以前から、彼らを街から追い出す原因に知らず知らずのうちに加担してきたかもしれない。そのあまりに巨大でグローバルなお金の流れに抗おうにも、それを吸収して変身しつづけるジャカルタ、そしてその血脈のように車であふれかえった道路に対峙して、私にはなす術が何もない。そんな私を気にとめることもなく、Polisi Cepekは街と道の流れをいとも自在にコントロールする。私は彼らと交渉し、鶏を乗せた巨大な荷車を押して道路を横断する間、彼らに道路をせき止めてもらった。美術館で繰り返し再生されるその記録映像のなかで、その再生のループからも鳥かごからも逃げ場を失った鶏とともに、私はジャカルタの道路を永遠に往復し続ける。